「世界を旅する植物館」~宇部市ときわ公園
5月のはじまりの日、ときわ公園の植物園を再訪してきました。前回からしばらく空いていたので、ちょっとした「ただいま」の気持ちで。よく晴れた朝、外気温は20℃ほど。風はおだやかで、半袖でも肌寒くないちょうどいい初夏のはじまり。
この日の植物園さんぽ、4回に分けて綴っていく予定です。その第1回。
まずは、大好きなシダの仲間たちを紹介。葉のかたち、胞子のいろ、根茎の質感。しばらく、葉と胞子のあいだに沈みこむ時間。
リュウビンタイ|Angiopteris lygodiifolia

入って早々、ぐっと視線を奪われた一株、リュウビンタイ。
ものすごく古くから姿を変えていない、木性のシダだそう。太く、しっかりとした基部。そこから扇のようにひろがる葉。1枚1枚がとても大きく、こちらの腕より長いほど。
葉のさざめきも、幹の質感も、どこか「古い」。シダの系譜のなかでも、とりわけ古生代寄りの存在らしい。この一株の前に立つだけで、時間軸がすこし長く感じられる。
胞子嚢のひと粒ひと粒まで、ていねいに眺めてしまう存在感。
ビカクシダ|Platycerium

つぎに釘付けになったのが、ビカクシダのコーナー。実は我が家でも、ビカクシダを6株育てています。種類はそれぞれちがうのですが、見るたびに、また別の顔に出会いたくなる。
まずはビカク玉。ビカクシダを球状に仕立てるスタイルのことを指します。下から覗いても、横から眺めても、まあるい完成形。胞子葉が四方八方にのびて、ひとつの小さな宇宙のような姿。
我が家でも、いま一株を玉仕立てに挑戦中。日々のお世話のたびに、子株が待ち遠しい。完成形を目の前にすると、「ああ、ここを目指していたんだ」と、背筋がのびる気がしました。


つづいて、Platycerium willinckii、ウィリンキーの2品種。
同じ種類なのに、〈セルソタツタ〉は胞子葉のラインがシャープで、凜とした空気をまとっている。一方の〈ジェイドガール〉は若葉がやわらかく、緑の濃淡がどこかやさしい印象。
ならべてみると、品種違いの表情のちがいが、はっきりとわかります。家の子たちとはまた別の顔ぶれに、にやにやしてしまう。
カシワバハカマウラボシ|Drynaria quercifolia

ここで、思わず立ち止まる。
我が家で育てているドリナリア・クエルシフォリアと、おなじ種類。サイズもそんなには変わらない。だからこそ、ふしぎな再会の感覚です。
同じ種類でも、置かれている環境がちがえば、葉の出かたや株姿の表情がすこしずつ変わるもの。植物園の照明、湿度、風の通り道。我が家のリビングとはまた別のリズムで育っている一株。
「はかま」の部分、つまり貯水葉が、柏の葉のような造形でくっきりと並んでいる様子。我が家のと見比べたくなって、しばらくその場に立ち止まり。
「うちの子、元気にやってるかな」。同じ種類の植物に出会うと、家の子をふと思い出す。これも、植物との暮らしのおもしろさ。
レカノプテリス・ロマリオイデス|Lecanopteris romarioides

そして、今日の大発見。初めて出会った植物、レカノプテリス・ロマリオイデス。
ぷっくりと膨らんだ太い根茎が、まるで生きものの腕のようにねじれて伸びている。ふつうのシダの根茎とは、ぜんぜんちがう存在感。
この子はアリと共生する性質をもつ仲間で、根茎のなかにアリを住まわせると聞いたことが…。本当だろうか。本当だとしたら、なんておもしろい暮らし方。植物とアリが「お互いさま」で生きている世界。
しばらく、まじまじと見つめてしまいました。いつか、この子も家に迎えてみたい。新しい憧れ、ひとつ追加。
チランジア|Tillandsia


シダではないけれど、すぐそばで存在感を放っていたチランジアたちもひとこと。
土も水苔も使わず、空気を借りて暮らす着生植物。シダたちと同じ展示エリアに、別のベクトルでさりげなく馴染んでいました。
葉先のかたち、銀色の鱗片の濃さ、それぞれにちがう。シダたちのような胞子の世界とはちがう、もうひとつの「葉の物語」。しずかに、そこに在る感じが心地いい。
ディクソニア|Dicksonia antarctica


最後はディクソニア。木性シダの大型種。
太い幹は、たっぷりの毛におおわれていて、まるで動物のたてがみのよう。そこからゆるやかに弧を描いて、大きな葉が天井のほうへとひろがっていく。
古生代の面影を、そのまま閉じ込めたような姿。葉のした、しずかに濃い影。
シダの系譜の、ふかい時間の終点に置かれているような感覚。シダ好きとしては、ずっと立ち止まっていたい一株。
最後に一言
ひとつのコーナーに、これだけのシダたちが集まっていてくれて、ほんとうにありがたい一日でした。
我が家のドリナリアと6株のビカクシダたちにも、ちょっと張り合いが出た気がします(笑)。レカノプテリスや、まだ出会っていないシダたちも、これからの楽しみとして、ひっそりリストに加えておきます。
ときわ植物園さんぽ #3、まだまだ続きます。次回は、また別の主役たちを連れてきますね。
では、また次回

