「世界を旅する植物館」~宇部市ときわ公園
植物園さんぽ、第3回。今回は乾いた光のなかに暮らす植物たち、多肉とサボテンとアガベ。
実は我が家でも、いまドライガーデンに挑戦中。鉢ではなく土に直接、強い日差しに耐える植物たちを並べていく試み。だからこそ、植物園のこのエリアは、ふだんから「うちの先輩たちに会いに来る」気持ちで歩きます。
外気温は22℃ほど。乾いた光が温室のなかにそそがれて、植物たちの故郷を思わせる、からっとした空気。
アロイデンドロン・ディコトマ/青鰐|Aloidendron dichotomum & Aloe ferox

このコーナー、入って真っ先に向かったのは、前回名前が分からずもやもやしていた一株。今日こそ、と名札を確認しに。
正体は、アロイデンドロン・ディコトマ(Aloidendron dichotomum)。和名では「矢筒の木(Quiver Tree)」とも呼ばれる、アフリカ原産の樹木状アロエの仲間。Y字型に枝分かれする独特のシルエットがトレードマーク。
「やっと名前わかった!」。ささやかなリベンジ達成の瞬間。
そしてその右隣に、もう一株。青鰐(あおわに)、学名はAloe ferox。ケープアロエの別名でも知られる、南アフリカからレソト王国にかけて自生するツルボラン科の樹木状アロエ。
「鰐」の名にふさわしく、幹には古い葉が幾重にも残って、まるで爬虫類の鱗のような質感。新しい葉は上のほうで青みがかったグリーン。古い葉と新しい葉の対比に、生きてきた時間がそのまま刻まれている。
実は我が家のドライガーデンにも、アロエ・フェロックス(青鰐)と、アロエ・ペグレラエが地植えされています。家の子たちは、まだまだ細く小さく。植物園のこの存在感を見ると、いつか我が家の青鰐も、こんなふうに鱗の幹を持つ日がくるのかな、と未来をのぞきたくなる。
パキポディウム・マカイエンセ|Pachypodium makayense

つづいては、塊根植物(コーデックス)の代表、パキポディウムのコーナー。
学名はPachypodium makayense。マダガスカル原産で、ぷっくりとした幹とトゲのコンビネーションが特徴的。コーデックス愛好家のあいだでも人気のある品種。
普段はトゲや幹の質感ばかりに目がいきがちなパキポですが、この日はなんと、花を咲かせていました。
パキポの花を見るのは、初めて。星のような形で、繊細で可憐。あんなにごつごつとした幹の先端に、こんなにやさしい花が咲くなんて。植物のギャップに、しばし足止め。
うちにもいつかパキポを、という新しい憧れがひとつ増えました。
金棒の木

ふと目に入った、ごつごつとした塊。
名札を見ると、その名も「金棒の木」。鬼が振り回すあの金棒、そのままの名前。そしてそのままの姿。
太い幹に、コブのような突起と、ところどころのトゲ。たしかに、これで殴られたら…と想像してしまう迫力(笑)。
植物の名前って、見た目そのままを採用しているものが多いけれど、ここまで一致しているのもめずらしい。名付けた人のセンス、好きです。
杢キリン|Pereskia

そしてこちら、杢キリン(もくきりん)、Pereskia属。
何が特別かというと、これ、サボテンの「祖先」とされる仲間なんだそう。
ふつうのサボテンは、葉を退化させてトゲと幹だけにして、乾燥に耐える進化を遂げた仲間。けれど杢キリンは、まだちゃんとした「葉」を残しているサボテン。サボテンと木の中間のような姿。
進化の途中の一コマを、いま目の前で見ているような不思議さ。たくましさのルーツが、ここにある気がします。
サボテンたち|Cactaceae



そしてこのエリアの主役、サボテンたち。とにかく、たくさん。大小さまざま、まるいの、長いの、ごつごつしたの。
実は我が家のドライガーデンにも、金鯱(Echinocactus grusonii)とうちわサボテン(Opuntia spp.)の仲間がいます。だからこそ、植物園で「先輩」たちに会うと、つい姿勢が低くなってしまう。
植物園の金鯱は、ボーリングのボールほどに育った、まるい王様の風格。我が家には、こぶし大の子どもサイズと、直径20cmほどに育った中堅サイズが並んでいます。「いつかこのくらいにね」と、植物園の王様を見上げながら、心の中で声をかけました。
そしてその奥に広がっていたのは、見上げるほどに高くそびえる柱サボテンたちの群生。家のうちわサボテンとはまた別系統の、空にむかってまっすぐ伸びる仲間たち。乾いた土地に、まるで列柱の神殿のような風景。
たくさんのトゲ、たくさんの肉厚な株、たくさんの命のかたち。乾いた土地で、こんなに豊かに在る、ということ。
アガベたち|Agave

そして、本記事のクライマックスはこちら。一枚の写真に、7品種のアガベがそろっていました。
ブルーグロー(Agave ‘Blue Glow’)。葉の縁に走る赤いラインと、青みのある葉色。シャープで端正なフォルム。
パリー・トランカータ(Agave parryi var. truncata)。ロゼット状にぎゅっと締まった葉が美しく、コンパクトな存在感。
吉祥天(Agave ‘Kichijoten’)。和名がついている分、なじみ深さがある一株。
笹の雪(Agave victoriae-reginae)。葉の白い縁取りが、雪化粧をまとったような優美さ。
ストリアタ(Agave striata)。細い葉が放射状にひろがる、線のうつくしさ。
雷神(Agave potatorum)。葉の縁のトゲがしっかり主張する、力強い名前と力強い姿。
ブラクテオサ(Agave bracteosa)。葉のトゲが少なく、しなやかな曲線でやわらかな印象。
実はこのうち、ブルーグローとパリー・トランカータは、我が家のドライガーデンの仲間。日々目を合わせている子たちが、こうして別の品種と並んでいる姿を見せてくれて、ちょっと胸が熱くなりました。
うちの子たちが、こんなふうに「親戚」と並んでいるところを想像する。それだけで、家のドライガーデンが、すこしひろがって見えてくる。
最後に一言
ひとつのエリアに、これだけ乾燥地の植物たちが集まってくれて、自宅のドライガーデンへの愛着が、あらためて深まった一日でした。
名前がやっと分かったディコトマ、初めて見たパキポの花、青鰐や金鯱、アガベたちの先輩たち。我が家のドライガーデンには、ほかにユッカやオージープランツの仲間もいて、それぞれが少しずつ大きくなる日々。植物園で見たこの景色を頭の片隅に置きながら、また家で、乾いた光が好きな子たちと向き合おうと思います。
植物園さんぽ #3、いよいよ次回が最終回。最後のエリアの主役たちを連れてきますね。
では、また次回
