「世界を旅する植物館」~宇部市ときわ公園
植物園さんぽ、第4回。最終回です。
ここまで紹介しきれなかった、心にとまった一株、また一株を、最後にゆっくりまとめてみます。5月1日の訪問、いよいよ締めくくり。
外気温は22℃ほど。温室を出ると風がやさしい初夏。
コーヒー(アラビカ種)|Coffea arabica


最初に紹介したいのが、コーヒーの木。学名はCoffea arabica。
コーヒーが大好きで、とくに浅煎りに目がない私としては、生のコーヒーの木に出会えるのはちょっとした嬉しさ。我が家でも観葉植物として一株育てていて、つやつやとした濃い緑の葉を、ふだんから眺めています。
植物園の株は、家の子よりずっと大きく、風格たっぷり。葉の艶も、枝のひろがりも、ぜんぜんちがう。「飲むコーヒー」と「育てるコーヒー」、植物としてもしっかり、私の暮らしの仲間に入ってくれているんだなあと、しみじみ。
いつか、家の株にも実がつく日がくるのかな。豆を見られる日がちょっと楽しみ。
ディオーン・スピヌロスム|Dioon spinulosum

つづいて、Dioon spinulosum。メキシコ原産の、稀少性が高いソテツの仲間。
我が家でも、観葉植物として一株、ゆっくり育てています。とにかく成長が遅いことで知られていて、新しい葉が出るたびに、小さなお祭りのような気持ちになります。
植物園のディオーンは、葉のひろがりが立派で、堂々とした風格。見上げながら、家の子の何十年か先の姿を、勝手に重ねてみる。
「こちらが追いつくのが先か、向こうが大きくなるのが先か」(笑)。ゆったりとした生きものの時間に、こちらの時間もすこしゆるんでいく感じ。
エンケファラルトス・トリスピノーサス|Encephalartos trispinosus

そしてその近くで、青みがかった葉が目を引いた一株。Encephalartos trispinosus。ホリダスと近縁の、青葉系オニソテツの仲間。
葉の表面は、さらさらした青みのある銀色で、まるで金属を薄く伸ばしたような不思議な質感。トゲもしっかり主張していて、まさに「鬼」の名がふさわしい風貌。
青葉系のソテツ、好きな人にはたまらない一群。ホリダスやトリスピノーサスのような子たちは、見れば見るほど、ずっと眺めていたくなります。
アスピディストラ・シチュアネンシス|Aspidistra sichuanensis


つぎに気になったのは、ハランの仲間、Aspidistra sichuanensis。
正直、なかなか覚えにくい名前。何度口にしても、口に定着してくれません。けれど、葉の表情はしっかり目に焼きついた一株。葉に入った不思議な点々と、まだらの模様。植物がデザイナーになったような、計算された無造作。
名前は覚えられなくても、姿は覚えていられる。植物との出会いって、そういう記憶のされ方もあるんですね。
オリーブ(古木)|Olea europaea

そして、本日、思わず足が止まった一株。古木のオリーブ。
オリーブといえば、ふだん街路樹や鉢植えで見るのは細身の若木が多いけれど、この古木の幹の太さときたら。両手で抱えても収まりきらないほど。何十年、もしかしたら何百年もの時間が、ねじれた幹のなかに刻まれている様子。
幹のうねり、樹皮の溝、節のひとつひとつに、生きてきた重みがある。「植物の時間軸」というものを、ぐっと体感させてくれる存在。
オリーブの実を口にするたびに、こういう古木のことを少し思い出せたら、味わいもまた変わってきそうです。
チャメロプス・フミリス|Chamaerops humilis


そして、最後にとっておきの一株。Chamaerops humilis。
我が家のドライガーデンでも、地植えしているチャメロプス。だからこそ、植物園で出会うこの子は、特別な一株です。
植物園のチャメロプスは、すっかり立派に育っていて、葉のひろがりも、幹のしっかり感も、見惚れるほど。家の子もいずれは、こんなふうに堂々としていくのかな、と未来をのぞきたくなる。
そしてここで、ちょっと嬉しい話。家のチャメロプスも、ちょうど今、花芽が出てきています。植物園のこの子と、同じ季節を感じて、家の子も準備を始めているのかも。タイミングまでぴたり、というのが、なんだか心がほぐれます。
「家の子と、植物園の先輩が、同じ春を生きている」。それだけで、最終回にふさわしい、ひとつの場面。
最後に一言
植物園さんぽ #3、4部作の完結です。
第1回はシダの仲間たち、第2回は葉と花と幹のかたち、第3回はドライガーデンの先輩たち、そして今回は、心にとまった一株一株。同じ植物園を、テーマを変えて歩いてみたら、毎回ちがう景色が見えてきました。
家に帰って、自宅の子たちと向き合うと、また新しい目線で眺められそうです。コーヒー、ディオーン、チャメロプス、それぞれの「先輩」の姿を、心の片隅に置きながら。
ときわ公園の植物園、また季節を変えて訪ねてみたいと思います。
では、また次回
